top of page

ことばのサラダ

交換

 

窓から投げ込まれた光が部屋の隅を跳ねている

世界はいま、一行の詩と交換できる

日溜

 

床に光が溜まっている

両手で光を掬って

手を口元にもっていく

水を飲むみたいに

song of spring

 

小鳥の歌
光の粉砕
光は束になる
倍音に届こうとして

光は影を
影は光を
支え合いながら形は立ち上がっていく
独唱と独唱
光と影のハーモニー
朝を称えるような

音楽

 

華やぐ声
色とりどりの花が咲き乱れるような
小鳥は歌う歓びに溢れ
光と輪になるようで

天に導かれては天に触れ
琴線は震えて涙は頬を伝う
ただ共鳴する歓びに
共鳴する度に
感情は回転していく
グレーの中に映える色に
雨後に覗く晴れ間の美しさに
ただ雨が上がる歓びを鳥たちは歌う
花を咥えながら

傷つくことに疲れて

ただ花びらのような弱い心かばって

どこへ隠れよう

駆けないと

ほら蛇が小鳥を呑み込もうとしている

pianissimo

 

雨の連弾

花の香り

 

もう本当のこと分かりません

それが情けないことでも

 

雨の連弾

花の香り

 

いつか滅ぶのだとしても

きっと前進しているのでしょう

 

雨の連弾

花は香り

 

理由などないのでしょう

意味などなおさら

 

雨の連弾

花と香り

 

泡から生まれ

泡と散るなら

 

雨の連弾

花の香り

陽の陰りと共に

黄金の雲がかかるように

花の重さのような

花の体重のような陰鬱

懶惰(らんだ)な陰鬱

 

繁っていく

陽の射さない場所に定着して隙とみて育っていくような

心の中の翳(かげ)翳

スコールのように

虹のように

日照りのように

波間のように

あなたもせかいの歌う歌に違いない

love leter

 

貴女から
潮騒を感じる

波間を
日差しを
スコールを
きままな風を

なにげないとき
僕は貴女から自然の歌を感じる

 

海はかなしみのあまり青くなった
永久に失われた恋人のために、送る歌のように
波は砂浜に寄せては返す

あんなにも愛した人を
一度でも憎んでしまった罰に
海はもう来ない人を想い続け
永久に波を響かせる

 

私は海だ
全身に悲しみをいっぱいに湛えた
うねって荒れるすべてを押し流そうとする海

漲る怒りに筋肉の束は膨張し
膨れ上がった腕はあらゆる物を巻き込み沈めようとする
このまま怒りのままに破壊しつくしたい衝動と
きっと後悔するだろうという予感との間に立つ
人の形をした海だ

永遠の残響
出会っては別れる
波が水面に帰るように

かなたへと導くものは心の欠片
そのときにふと思った思いつき
それだけを持って明日の自分とする

​旋律

雨に濡れたアスファルトに松葉が落ちている
ただそれだけの光景がピアノの旋律のようで
胸を爪弾く

音楽に似ていると感じる
鮮やかな色彩と広い色合いを以って
軽やかな旋律のように
意味を超えて、
燃焼するように
鮮やかで
刹那的で愛しい

​紅葉

落ち葉が音楽を奏でている
一枚一枚の葉の
その色合いの幅によって

色が広さを持ち
奥行きを持ち

そこに空間をつくって
まるで音楽と映るような

落ちはいま見えざる弾き手によって奏でられている

細い旋律の中を泳ぐ
寂しい影に囚われて青にびた影に驚きつつ
夢は仄かなの幸福をあのときの輝きのまま僕に見せる
この膝を粉々にするために
暴力のような悲しみを振り回して

wake

 

まるで花を積み重ねたような肉体
空間を占める量感
朝の部屋で身体を起こそうとするその背中に
水浴びをする動物が重なる
彼がその身体を起こすまでの間
歩くもの 伏せるもの 蠢くもの 羽ばたくもの
それらすべての生き物が通過し
彼は人間となる

​speaking

落下する雨粒にすら光は透過し
まるで許しのような印象だけを置いていく
涙の出ない自分の代わりに誰かが代わって泣いてくれたような
そんな軌跡のような暖かさだけをそこに残して

印象だけを残して自然は過ぎ去っていく
自然が人に話しかけるように

 

例えば

雨が降り続いた次の日に
覗く青空のように

長い懲役からの
開放のように

ただ己を知るごとに
雲は引いていく
心に立ち込めていた雨雲は

針の穴のような小さな晴れ間から
雲が隅へ隅へと押しのけられていくように

苦しみによってもたらされる気づきによって
うつむきによって
心は青空への鍵を得る

感覚

 

手微かに伸べて
暗闇のなか葉脈のように光を探る朝に
細胞は起きているのか寝ているのか
そんなことさえ分からないまま
私の意識は静かに上昇し始め
一段ずつ覚醒の階段を上ってゆく
全身の血のめぐりや
体の紅潮も感じないまま
まるで植物が切断されても気づかないような
生の感覚すらない意識のまま

 

わたしがもう飛び立てないようにと

神はわたしの両の羽を毟り取り

わたしの魂を永遠の牢へと繋いだ

そこからは辛うじて小さな青空を見ることができ

青空を見上げながらわたしがどんな美しい声を上げて鳴くのかと

神は期待するのでした

この手

 

田を耕すことも

花を植えることも知らないこの手は

ただ言葉を折ることのみを知り

それだけがわたしがこのせかいに下ろすことのできる根

か細くも確かな

わたしの根っこ

 

詩を折ろう

わたしはいきていると言うのと同義に

折り鶴を空に放つような、

すべての空白に対する問いかけを込めて

 

折紙

 

空白に向かって

問うように

言葉を

折り重ね

折り重ね

折り鶴を

窓へ放すように

bottom of page